旧SさんのRPG愚痴部屋WIZARDRY8記事

未編集版

「SさんのRPG愚痴部屋」の管理人であらせられたSさんが、WIZ8について書き記した決定版の記事を管理人のdamnedが本人に許可をとってUPしたものです。

現在SさんはSWG(Star Wars Galaxy)の日記とゲーマー仕様のIBM互換機自作コラムのPAGEを製作されています。

Wizardry8
必須 Sさん的お勧め環境
対応OS Windows 98/ME/XP MEでもWinXPでもちゃんと動きます
CPU PentiumII/233MHz以上 できれば1Ghz以上欲しいですね。
メモリ メモリ64MB以上(128MB以上推奨) けっこうメモリを食うゲームなので
多いほうが良いでしょう。
ビデオ 3D graphics accelerator is required CPUが1Ghz程度あるのなら
GF2MXレベルでもまともに動きます。
空きHDD 1.2GB以上 フルインストしかお勧めできない。
CD-ROM 4倍速以上 左記に同じ

公式ページは消えているので
www.igechan.comのWiz8ページ
こちらでもパッチVer1.2を落せます
4gamer
Wiz7(CDS)から長い沈黙の期間を破り、2001年の秋に海外で英語版が最初に発売されました。私は2001年の中頃に、「今年の年末までにはWiz8の英語版が発売されそうだ」、という情報を聞いていたのですが、どうせまた日本語への移植は1年後とか、下手したらどこのメーカーもしてくれないんじゃないかと思っていました。

そして2001年11月に英語版が発売されたという情報を聞いて、このまま英語版でも手を出すか、それともあてにならない日本語版をいつまでも待ってみるか、どうしようか悩んでいた。結局、日本語版が出るまで待とうという結果になりまして、それ以降2ヶ月間はWiz8の情報収集を怠っていました。

そんなある日に・・・2002年を迎えた元旦です。何気に色々なゲームサイトを見ていたら、なんとすでにWiz8日本語版が発売されているという情報が目に入ったのです。発売されたのは2001年12月20日であり、海外で英語版が発売されてから、1ヶ月という最速スピードで日本語版が発売されていたのです。一通りWiz8関連の記事を読み終えた後には、ネット通信販売でWiz8を注文し終えた私の姿がありました・・・


最初に言いたい事なんですが、Wiz8に対して、「なんだよ、まだWizardryは本家が新作を出しているのか。しつこいなあ。どうせ中身は相変わらずなんだろうなぁ」、なんて思っている人が居そうだと私は思います。

はっきり言わさせてもらいますと、
このWiz8は「どこぞのM&M9なんていう、進歩を怠って落ちぶれてしまった奴」とは大違いです。
もう段違いです。

Wizardryファンなら、ファンではなくてもRPG好きなら、このシリーズは「戦闘ゲーム」だという事はご存知だと思いますが、その一分野に限った戦闘部分のみだけど、とうとう究極の地点へ到達してしまった作品が現れたのです。

それは正しくWizardry8その物であります。
■Wiz8の箱を見た時は
私と同じく古くからのPC版Wizファンの方は大勢居ると思いますが、インストする前に箱を見つめて、何やら不思議な感覚に包まれた人も居るのではないでしょうか。PC88版のWiz1から見て16年後のその時に、自分は最新のWiz8をプレイしようとしている、とね。

■キャラクタ作成は良い意味で簡略化
Wizardryほど全てにおいてランダム要素の激しい作品はなかったと、私は記憶しています。もう何を行なうにもサイコロサイコロサイコロで、キャラクタ作成も全てを運に任せて作らされる。運が良いともの凄く高い数値が出て、通常はとても貧弱なキャラクタになってしまう。必然的に誰もが、何度も何度もやり直して、最高に近い数値が出るまでやり直すんですよね。これは非常に「嫌い」です。

ゲーム内における遊び要素を省くやり方はダメだと思っていますが、モニターの向こうに居るプレイヤーにとっての、作業としての無駄要素省きは大歓迎です。

Wiz8は何回キャラ作成を行なっても、割り振れる数値は一定であるので、おかしな無駄な作業はやらなくていい。かと言ってキャラ作成自体がお粗末になっているのか?といえば、全くそうではないのです。逆に過去の作品よりステータスやスキルや他の部分が複雑化しているので、キャラを6人分作るだけで最初の一日は過ぎてしまうほどです。

今までの作品は、ステータスの通常での最高値は伝統の18であったのに、今回のWiz8はそこさえ軽く改変しています。ステータスのMAX値は”100”になりました。Wiz6BCFから受け継がれているスキルシステムもそのまま生きていて、尚且つパワーアップしている。BCFやCDSまでは、システムの裏をついてスキルを上げるという事が出来たのですが、Wiz8からはクラスチェンジ時にもかなりの制約を付けられたりとかで、事実上、万能のキャラクタは作れないようになっています。各キャラに個性が出るのはとても良い事だと思うので、この変更は大賛成であります。

他には新クラスとして”ガジェッター”が追加されたり、人気のバードが改良を施されていたりと、ファンとしてはかなり気になる変更が入っていました。

■最初は修道院前に墜落
まずは修道院の裏手?からスタートするのでが、そこは海辺になっていまして、「これがWizardryか!」って思うほどの美しさに息を飲みそうになるはずです。これといって特別な処理が行われているWiz8ではないんだけど、特に水面の表現はとても綺麗ですね。

空の雲の流れもとても自然で、描画性能としてはそれほど大したマシン環境を要求しないWiz8だけど、「綺麗なのに軽いゲーム」の筆頭だと思います。さすがに2002年以降に発売されている、とても素晴らしいグラフィックの作品と比べてしまうと見劣りするんだけど、それにしても美しいです。

■BCFからは伝統か?音楽はかなり良い
私がプレイしたWiz6BCFはFM-TOWNS版なのでCDサウンドでした。ここで余談ですが、TOWNS版の”Wiz5”と、TOWNS版のBCFは部分的に同じ曲を使用しているんですよ。同じと言ってもそのまま使っているわけではなくて、アレンジが施されています。

Wiz5の拠点となる城のBGMと、BCFでのアラム城の曲は同じです。Wiz5の方は勇ましい仕上がりで、BCFの方は緩やかで少し怪しげなテンポになっています。そして戦闘シーンの曲も同じであり、アレンジの仕方も城の曲とほぼ同じでしたね。BCFでは死者の川は、なんとも言えないほど不気味な雰囲気が出ている曲だった。本当に「ここは来てはイケナイ場所なのか・・・」と思わせるほど不気味な曲です。

話を戻すと、このWiz8は”亜流Wiz作品”も含めて、音楽でも最高の出来だと思っています。最初に蟹と戦う時に、まだ序盤だから自キャラ達はとても弱弱しいのですが、敵が自分より強い時にかかる曲で「Tough Combat」という戦闘専用の曲があります。これが鳴りだすと、Wiz8プレイヤーは寒気がするでしょうね・・・

他には拠点となる町である Arnika などのBGMもかなり好みです。この曲こそ今までのWizardryと一線を駕す趣味だと思うのですが、これは開発の総指揮官が途中で入れ代わったから、このような優しい感じの曲が使われているのかなと思っています。

そして曲のループの方法も私はこういうのが好きなんです。どういう事かと言いますと

某作品1:曲が終わるとすぐにループを始める
某作品2:最初の1回だけ曲がかかり、以後はエリア切り替えやロード時に曲が鳴りだす
某作品3:新しいエリアに入ればもちろん鳴り始めるが、その後は思い出したように曲がかかる


はいこれです。はっきり言ってメチャクチャ細かい事なんだけど、私はこういうの気にするんですよね。Wizardry8は「某作品3」に該当します。柔らかい曲が何度もループするのなら気にならないんですが、疲れるサウンドが連発するのも何だかな・・・状態ですし、最初の1回コッキリで鳴り終るのも寂しい。Wiz8はベストなタイミングで、曲が浮き上がるように再度鳴りだすのです。まあこれは一度プレイしている人でないとわけわからんでしょうね・・・

戦闘シーンの曲の話に戻りますが、Easyバージョン2曲、ノーマルバージョン2曲、強い敵の1曲と、計5曲も用意されています。これはキャラと敵のレベル差で判断されているようなので、そのまま信用すると大変な状況に追い込まれてしまうかも。特に召喚されるElemental系統の敵は、もの凄く強いのにレベルは低めなのでこれに当て嵌まりますね。

■相変わらず怪しい雰囲気の作品
Wizはどことなく暗い世界観というか、ゲーム内での雰囲気なんですよね。何をしていても落ち着かない、何を行なっても安心できない、というような感じで、現実とは離れてPC内部で異世界での嫌な?旅ができる作品です。

それは特にBCFとCDSに現れていると思います。BCFなどもの凄く暗い話に世界ですからね。でもBCFこそWizardryで最高だと賞賛する人も沢山いるので、そっち方面の良さがWizに合っているという事かもしれない。

このWiz8は歴代Wizardryの中で、もしかすると「最も明るいWiz」ですね。この部分も開発しているメーカーの総監督が途中で入れ代わったために現れてしまった?症状なのではないかと私は思っています。David W Bradley氏がそのまま最後まで自分で作っていたら、BCFやCDSのようにさらに暗くて難解な作品になっていたかもしれない。

幸か不幸か分かりませんが、柔らかくなったWiz8は、Wiz全体を通じて高い評価を得られた作品になっています。とは言うものの、柔らかいとは飽くまで雰囲気の事ですので、戦闘シーンの難易度はここ最近の作品など問題にならぬほど厳しいです。

■形は無い、だが道筋はあるWizardry
何の「形が無い」のか? 他のコンテンツでも言っていますが、最近の作品はなんかこう「任務達成促進システム」、みたいに出来上がっていると思うのですが、Wizardry8はその流行に乗る事が無く、その部分はBCFからの怪しい雰囲気、「このまま進んで大丈夫なのか・・・後戻りはできないんじゃないのか・・・」みたいに不安に恐れながら先に進まなければならないスタイルを貫いています。

ここも何が良いのか非常に難しいんですけどね・・・1つ言える事は、どの作品も他と全く同じような、任務達成促進ゲームになってしまう事は良いと思えないので、少なからずWizardryのような作品が残ってくれている事を嬉しく感じています。

というかはっきり言いまして、このような部分を評価したり考えてみたりする人が他に存在するか疑問なんですが・・・分かってくれる人はいると信じて、いま書いています。

簡単に言いますと、クエストジャーナルに次の目的が明確に記載されて、それに沿うように進めるゲームではないって事です。だが今回のWizはイベント記録ジャーナル機能というのが搭載されていまして、それを見て次に行なうこと自体は見えてくるのですが、別に「クエスト名」が付いてるわけでもなし、「今後やる事」みたいに綺麗に整頓されて表示されるわけでもない。単純にその日の記録みたいなジャーナルですね。

これも何度も何度も他のコンテンツで書いている事だと思うのですが、あまりに便利化してしまうと、自分でクリアする、自分の力で自分を先へ導く、というような部分の面白さが消えてしまうと思うんですよ。その点Wizardry昔からぜんぜん違いました。壁に書かれているヒントらしき落書きが目に付いて、それを自分で覚えておいて、だいぶ後になってその落書きの内容が生きてくるとか。誰に指図されるわけでもなく、クエストとして形にして売り文句にするわけでもなく、現実とは別の世界を自分の力で彷徨い、そして先へ進んで行くというような楽しみが盛り込まれている作品だと思います。

この部分は深く語るほど意味不明になってしまいます。

■ファンなら嬉しいシナリオ
このWiz8はBCF→CDS→そのまま続き、のような話になっていまして、悪の象徴ダークサヴァントも、サイ種族Umpaniも、蜘蛛人間T'Rangもそのまま出てきます。他にもRattkinというネズミの姿をした集団や、Helazoidと呼ばれる女だけの種族の生き残りに、黒いドラゴン”ベラ”も出てくるし、過去のBCFとCDSを愛しておられる方ですと、これ以上ないほどの魅力的な話に作られています。ああでも、そんなにファンな人は、すでに間違いなくWiz8は終わらせているでしょうね・・・(ちなみにベラはBCFでの重要吸血鬼?(人物)であるレベッカの弟です)

話の内容としても、例えばですがお決まりのような、「邪神復活!」 「最強の悪魔!」 「地獄の無敵の使者!」、みたいな奴が相手で、それを倒さなければならない話なんて、RPGをやり込んでいる人ほど嫌に感じるでしょう。このWiz8は、単純に因縁のあるダークサヴァントとの決着に話の焦点が向けられています。

別に他の種族もサヴァントを心底恐れているわけでもなく、「あの野郎は金を踏み倒して逃げやがったんだ。えらいめに合わせてやるぜ」とか、この辺も人間臭いシナリオ展開ですので、BCFやCDSを知る人ほど楽しめる内容に出来上がっていると思います。

たぶん後付けの設定だと思うのですが、BCFからWiz8までのシナリオを脳内で辿ると面白いんですよね。これはちょっとネタバレになってしまうんだけど、あれだけ苦労しないと辿り着けなかった Cosmic Circle に、一体どうやってゾーフィタスと災いの王は侵入したのでしょうか? Wizの書籍とかはまず読まない人間ですので、その部分を知らないのです。代わりにBCFの攻略本はクリア後に3冊ほど購入したのですが、その部分には触れていないんですよね。

どう考えてもあの2人が盗み出せるとは思えないなあ。

■戦闘バランスは・・・
Wizardryとは世界最高の戦闘での興奮を味わせてくれる作品だと信じています。いや信じていましたが、それは大きな間違いでした。過去のWizardryも和製Wizardryも確かに良く出来ている作品だと思いますが、どれもこれも元祖Wiz1から全く進歩していないんですよね。進歩がないという事は、基本的にWiz1の戦闘の楽しさ以上を期待しても無理があるって事だと思います。

1作品だけ続きに同じような品が出るだけなら、まだ解る話なんだけど、あまりに進歩を怠りすぎましたね。現にWizardryなど過去の産物としか思われないような、その程度の扱いを現在受けているはずです。ここ最近はシングルRPGの良作がかなり増えてきていると思うし、もう完全にWiz、Ultima、M&Mの時代は過ぎ去ったと思っています。しかしその中でもWiz8だけは過去を拭い捨てて、身内の作品さえも手本とせずに独自の要素満載で開発されているし、そうだからこそ私は良い評価を与えているのです。

で、話を戻しますが、Wiz8の戦闘モードは過去からの定番である「ターン制」戦闘そのままに仕上がっています。移動中はもちろん自分で操作するので、若干のアクション性はあるんだけど、基本的にアクション性は0と言ってもよいです。さらに移動中に敵キャラクターもうろうろとリアルタイムで移動をしているので、以前の作品よりは操作が忙しくなっているかもしれません。

だが移動中からWiz8の戦闘は始まっているのです。そのまま何も考えずに敵と遭遇していたら、今回のWiz8は命がいくらあっても足りないはず。パーティーのフォーメーションというシステムが導入されているのですが、これがまた良く出来ています。以前から前衛と後衛に、後から中衛の概念も導入されているWizですが、さらにこの部分が複雑化しているのです。適当にキャラクタを配置して、適当にモンスターと遭遇して敵に背中を見せるなんて事があれば、その時は装甲の薄い魔法使い系のキャラクタなど、一瞬にしてあの世へ送られる戦闘難易度だと思います。



これはゲーム画面でのフォーメーションの図です。実は最近またWiz8をやり直しているのですが、その時に撮った画像です。赤い色はロード、ピンク色はRPCの盗人Myles、緑はモンク、紫はガジェッター、右側の黄色は逞しい姉さんVi Domina、真中の3人が装甲薄めのサイオニック、ビショップ、アルケミストの3人です。ちなみに、今回はあえて効率が悪いパーティー編成で挑んでいるのでこの組み合わせです。けして真似しないように・・・
(私の大好きないつもの定番は、バルキリー サムライ 忍者 バード 僧侶 メイジ、です)

これを見たら何となく分かると思いますが、もしもパーティーの右側からいきなり敵に襲われたら? その時はVi姉さんが一番危険な状態に晒されるってわけです。他には、もしも後ろにいきなり強敵が現れたら? その時は虚弱なスペルキャスターの3人が危機に陥ってしまう。簡単な説明ですが、これが理由で「移動中からも戦闘が始まっている」んですね。

フォーメーションの基本なんですが、一番前に置かれるクラスは接近戦闘に強く装甲も厚くできるタイプが良いっていうことは何となく分かりますね。両サイドはバルキリーやガジェッターとかモンクも、場合によってはバードもなかなか良さそうです。この両サイドからは、中距離攻撃かそれ以上の遠距離攻撃が得意なクラスが適しています。そしてできるかぎり装甲も厚い方がいいです。適当に立ち回ると常に死の影が付きまといますが、上手く動いて壁を背にして戦えば、ちょっとやそっとじゃ負けない戦いができるってわけです。

■戦闘バランス2
BCFとCDSでも魔法にパワーレベルという概念はありましたが、細かく範囲や方向までは決める事が出来なかった。何故なら所詮は4方向にしか動けないゲームだし、戦闘中は一方を向いていたら事足りるからです。

Wiz8はその辺がさらに細かくなっています。ある意味やり過ぎかも・・・
使用する攻撃魔法によっても違いますが、ある魔法は現在そのキャラクタが詠唱できる範囲の中でパワーレベルを決めて、その後に撃つ地点を指定して決めるのです。これは円形にダメージが入るタイプの魔法です。

別の魔法は詠唱者を中心に広がるように魔法ダメージの効果が出るタイプで、こちらは少し範囲が狭くなるんだけど、自分の目の前にいる敵ならまとめて狙い撃ちする事ができます。それ以外にも単体攻撃魔法、魔法アイテムの使用などでその効果が出せますが、アイテム使用にもスキルが関わってくるので、慣れないキャラクタが勢い余って火薬の瓶などを敵に投げつけようとすると、パーティーの目の前で爆発して大変な事になりますよ。

もちろん自キャラも敵キャラも、この世界に存在する生物全てに魔法抵抗力が設定されていますので、相手に合った領域の魔法を使って攻撃するのが効果的であり、逆に火の精霊などにFireBallを撃っても殆どダメージはいきません。まあこの辺はCRPGの定番ですね。

物理攻撃の方ですが、もう何で判定して攻撃回数が決まっているのか? 何を基準に当たったり外れたりするのか? もちろんある程度は理解していますが、真まで理解できないほど細かく作られています。SFC版のWiz6BCFは、かなり物理攻撃が当たらないらしいですが、このPC版Wiz8も序盤はぜんぜん当たらないです。後半になってステータスも上がりきり、スキルも満足に上がってきて、攻撃補助魔法も存分にかけておけるようになると、話はまた変わってきますけどね。攻撃が当たらない→序盤はやはり厳しい、って事が言えます。

■戦闘バランス3
戦闘というタイトルが3連続なんて、やはり戦闘ゲームなんでしょう。
武器使用に関してもWiz8は相当細かく作られています。BCFやCDSレベルでも、以前のWizに比べたらかなり細かいのですが、それ以上に、そして良質に改善が成されています。

まずは右手に持つメイン武器、左手に持つサブ武器、それとは別に取替え用のメインとサブ武器と、合計4種類装備する事ができます。常に手にする武器は接近戦用の武器にしておいて、取替え用は飛び道具系にしておくとベストですね。その判断も自動で完璧に行なってくれるので、とてもプレイし易いと思います。

そして存在する全ての武器にレンジが設定されていますので、一番前にいるキャラクタが近接武器使用だと、すぐ目の前に居る敵しか攻撃できないのですが、もしも槍や棒状の武器を装備している場合だと、もう少し遠くにいる敵を叩く事ができます。槍や弓や銃などを上手く扱えるクラスは、この事から両サイド向きと言えるのです。前衛が接近して戦っている最中に、少し離れた横側から攻撃できるってわけです。

■クラスの特色付けも上手い
今までのWizだとクラスの名前が違うって事と、装備できる武器や鎧などが違うこと、ヒットポイントや成長の仕方が違う事、確かに個性はありますが、結局そこまで差はなかったんですよね。

今回のWiz8はその辺が上手いのです。とても簡単な事なんですが、例えばバルキリーだと恒久的に「槍スキルにボーナスポイント」が付いています。忍者ならクリティカルスキル、モンクならマーシャルアーツ、メイジならWizardryスキルって具合にです。

これが何を意味するかというと、如何にクリティカル発動率が高い忍者でも、剣を扱わせたら右に出る者は居ないであろうサムライだとしても、こと槍を使うって事に関しては、絶対に数値上バルキリーを越えることはできないんですよね。もちろんその差は極微量なので、体感できるほどの事ではないっていうのも重要なポイントだと思います。あまりに差があると他のクラスで槍を使う意味が無くなってしまうし、かと言ってそういう「味付け」部分が全く無しの場合は、今までと同じWizとして味気なくなってしまいますからね。その辺りのバランス取りは上手いの一言! ある1つの事を除いてですが・・・

他にステータスがMAXの100に到達して、初めて覚える事ができる高位スキルも存在しています。だがここはちょっと疑問なやり方ですな。なぜならその高位スキルを早く覚えたいと思った時は、重点的に1つ又は2つ程度のステータスを上げなければならない。結果として、途中経過のみの事になりますが、ステータスバランスが崩れたキャラクタになってしまうという事です。

うーん・・・だが今ここで整理してみると真っ当なバランス取りなのかな。早い時期に高位スキルを身に付けたいキャラクタは、ステータスバランスを崩してまでも早くに得る事ができるが、ステータスを満遍なく綺麗に上げていくキャラクタは、高位スキルを早急に得る事はできないが、ステータスバランスの優れた使えるキャラって事になる。そうか、そういう事だったのね・・・

このスキルボーナスだけではなくて、他にも数種類程度のクラス特有の特殊能力があるんですよ。モンクだとマーシャルアーツにスキルボーナスに加えて、ダメージ耐性に暗闇でも行動可能という特殊能力です。バルキリーだと槍にスキルボーナスと死の回避がそれになります。この辺りを見ても、以前のWizardryとは全く違う出来栄えだと言ってもよいですね。とても優れた完成度だと私は思います。

■意外な一面、NPCとの優れた会話モード
良質RPGと呼ばれる作品には、NPCとの会話モードがいかに優れているか? そこも重要な判断材料になると思います。Wiz8の場合は深く話せるNPCの数はかなり少ない方だと思うのですが、その1人1人と絶妙な会話が進行するように出来ていて、見る者を楽しませる仕上がりだと思っています。ゲームの面白さに直接影響する事とは思えないんだけど、一応ですが全NPCの全台詞が音声付きになっております。

基本的には右側に表示される人物名や地名などの固有名詞をクリックすると、自動でその事について質問した形になって、そのまま「場所を訪ねる」コマンドを実行すると、聞いたものについて、そのNPCが知る範囲での情報を仕入れることができます。もちろん中には意地汚いというか、腹黒いNPCも存在していますので、少量のお金を要求される事もある。

そしてクリックして最初から用意されている名詞を訪ねること以外にも、直接キーボードからタイプをして、プレイヤーが聞きたい事をそのまま入力できる方法もあるのです。ここは懐かしいですね、以前のWizardryは全てがそのパターンで作られていた。そのせいでCDSでムンクハラマへ行きたいのに、数日(現実時間で)足止めされたわけですが・・・

もちろん意味不明なゲームに関係のない事を入力しても同じような反応が返ってくるだけなんですが、中には意外な台詞を聞く事ができるNPCも居るので、色々と試してみると面白いですよ。

ゲームが進行すると会話の最中に、ある「答え」の入力を迫られる時があります。この部分も昔のWizardryからそのままなんですが、時代に合わせるように、ゲーム業界全体に合わせるように回答の難易度も易しくなっているので安心です。

■ゲーム自体の難易度は並レベル
ここでいう難易度とは、戦闘ではなくて謎解きとかそういう面の事です。以前の作品はそれはもうメチャクチャって言ってよいほど難易度高すぎでしたからね。Windows以降のPCゲームしか知らない人達だと、まず挫折しそうな難易度を誇っています。

とは言っても前期Wizに該当するWiz1〜Wiz5(Wiz4は除く)は、アイテム使用やそういう面での謎解きは易しい方だと思います。あまりそういう部分に凝ってないですからね。問題となる強烈な難易度の作品は、アドベンチャー要素が強まったBCFとCDSであり、ダンジョン自体が凶悪という視点での話になると異作とも呼べるWiz4なんかもやばいですね。その中でもWiz5だけは開発者がBCFとCDSと同じDavid W Bradleyなので、何となくですがその2作品と同じような匂いがする仕上がりだと思います。だが強制的に過去の遺物とも呼べるシステムの中で作らされているので、作品自体として無理を感じるのがWiz5でもありますが・・・

Wiz8は謎解きは非常に簡単です。簡単とは言っても比較対象がBCFとCDSですので、現在主流のRPGよりは難しいレベルであるでしょうね。CDSなんて貴方、これは何回もその辺で言っている記憶があるのですが「下手すりゃ鍵が100個」存在してますのよ・・・自動でアイテムを使ってくれるゲームであるのなら、鍵なんて何種類あっても問題ないんですが、全て「アイテムを使う」コマンドを呼び出して鍵を指定してから、画面のどの部分に使用するかカーソル指定しなければならないのよ・・・

そして現行主流の「任務達成促進システムRPG」であるのなら、ジャーナルとかに何のアイテムが関わっているのか詳しく記載されたりするので簡単なんだろうけど、Wizardryとは全てにおいて「抽象的な表現」が得意な作品だと思うので、一体この鍵はどこで使うんだ・・・って悩んでしまうシーンの連発でしたね。まだ鍵の形をしているだけマシかもしれない、Wizは鍵の形をしていなくても鍵って場合が多々あるし・・・

Wiz8にも確かにアイテムを使用して進展させるシーンがありますが、その全てにヒントがあるし、CDSに比べると控えめです。量的に見るとBCFと同じ程度なんだろうか、それともBCFの方が少し多いのかなあ。

だがここは、逆にこういうのが全くないと味もそっけもないゲームになってしまうんですよね。他の部分に魅力や楽しみがある作品ならまだしも、WizardryはMAP自体がパズル化していて欲しいと思うほど、こういう謎解きが向いていると思っています。

謎解き難易度の結論は「誰でもクリアできるレベル」であります。

■でも戦闘は真剣にハード
謎解きは並でも戦闘はかなり苦しいかもしれません。適当にコマンドを選んでいるだけでは、何人死ぬか分からないほど苦戦する事でしょう。しかし苦労して敵を一掃した時の感激は、一際高次元の物が味わえるはずです。

余談というかゲームその物の事ではないのですが、日本語版用の修正パッチのバージョンによって、少しですが難易度は変化します。これは敵が強くなったり自キャラが弱くなったりとか、そういう変更ではないのですが、「盗みスキルの修正」によって違いが出るんですよ。

デフォルト状態とパッチVer1.1までは、ロードを繰り返せば好きなだけNPCからアイテムを盗む事ができます。はっきり言ってこれはバランス破壊を起こすほどアイテムが手に入ります。そして日本語版用の最終パッチであるVer1.2を導入すると、細かいバグなども修正されるに加えて、盗みが事実上「不可能」になっているんですよね。ロードを繰り返しても上手くできないように調整されています。

Wiz8をVer1.1とVer1.2の両方でプレイしていない人じゃないと理解してもらえないと思いますが、この変更の差だけで難易度が変化します。Ver1.1だと盗み放題に加えて、現時点で自分にとって過ぎたる物レベルの武器や鎧まで盗めてしまう。あげくの果てに盗んだアイテムを売り払いまくって、そのお金でスペルブックなどを購入する事もできる。それ以前にスペルブックを盗みまくればいいし・・・もうこれは一切お金には困らないって事だし、終盤まで買える武器なら最良の物を使えるってことです。さらにWiz8は最高に近い武器や防具でも、某城で「ちょめちょめ」してるし・・・

これがVer1.2だと盗む事ができないので、序盤から中盤にかけてはお金は少ないし、後半になってもお金で困ることでしょう。スペルブックを盗めないので魔法の覚えもVer1.1より遅くなってしまいます。

だがプレイしてみた感触では、正当なのは間違いなくVer1.2の方でしょうね。現在はVer1.1は手に入らない状態だし、ゲーム自体の面白さも違ってしまいますので、素直にVer1.2を導入しましょう。絶対にVer1.2で突き進む方がWiz8は面白いです。

・追記で
こんな偉そうなことを言っていますが、私がWiz8を最初にクリアしたのは2002年1月から2月にかけてです。この時はVer1.1しか存在していなくて、もう盗み恐喝にやりまくりでした・・・はい失格ですね。代わりに2003年4月の今現在に、「パッチVer1.2、鉄人モード、難易度エキスパート」で、久々にWiz8の世界を満喫しています。


・もう1つ追記で
日本語版用の修正パッチVer1.1は、こちらのdamnedさんのサイトで落とす事ができます。すでに他では手に入らないパッチですので貴重ですよ。どうしてもVer1.2は厳しいと感じるお方は、導入するのも良いんじゃないでしょうか。

■Wiz8の2つの欠点
このWiz8はRPG「ロールプレイング」ゲームとして見た場合は、はっきり言って脱線し過ぎてしまった作品だと思いますが、だがそんなの所詮は綺麗事です。ゲームとして面白ければ、ジャンルや世界観なんてどうだって良いと考えるのが私です。この辺は人それぞれだと思いますので、飽くまでこれは私の理屈です。

そこまで楽しくて優れた作品なんですが、やはり気になる点はありました。しかしここで挙げる2点はその中でも大きく目に付いた物です。細かい不満とかは沢山ありますが、些細な事だしきりが無いのでやめます。

・戦闘時間が異様に長い
これは細かくて究極の戦闘モードを導入した半面、この戦闘時間の長さが気になるほど体感できてしまいます。それはもう本当に長いときは長いです。Wiz外伝フリークの人達とかが見ると、さらに長いと感じるかもしれない。初期Wizや和製Wizの売りは、テンポ良くボタンを連打して爽快に済ませられる戦闘ですからね。

敵は異常な数が出てくるし、特に後半の某城では、1回の戦闘時間が1時間を越える場合もあるほどです。しかし私は、Wiz8を単純なCRPGの戦闘として見てはいません。日本風に言えばシミュレーションゲームのような、現在主流のジャンルで呼べばRTSのような、そこまで戦闘シーンが細かいのです。

殴ったり魔法を撃つシーンが長いだけなら良かったのですが、遅い原因は敵の移動速度なんですよね。その改善はこのツールを導入する事によって、幾分はまともになると思いますが、飽くまで移動速度のみの事なので、長いことに代わりはないでしょう。

・Fighterが強すぎ(らしい)
私は好きなクラスじゃないので、殴り専門のFighterはまず使わないので詳しく知らないんですが、このFighterの特殊技能である、バーサク攻撃(2倍ダメージ)、気絶させる、などがバランス破壊を起こすほど凶悪らしいです。

例えば先に書いているバルキリーの槍スキルボーナス効果がっていうのがありましたよね? このFighterバランスのせいで、そこが壊れているんですよ。結局は成長しきったら安定して2倍ダメージを与える事ができる、Fighterが槍を装備する方が強いってことです。

「気絶させる」のみにしておくか、ダメージ増加は1.25倍ほどにしておくのが正解だったと私は思うのですが、まあ嫌な方はFighterを使わなければよいだけですね。

■総合すると
他のコンテンツにも書いていますが、もう間違いなくWizardry中でNo.1確定です。もちろん個人の好みがありますので、この限りではないですけどね。

ゲームシステムも、話の内容も、パッチ導入による絶妙なゲームバランスも、適度な謎解き難易度に、絶頂を味わえる戦闘シーンに、どこを見てもWizardryで最高としか言い様がないです。

Wiz中では間違いなくTOPの出来栄えだと思いますが、ここ数年間に発売されているほかのCRPGを見ると、明らかにWizardryという作品自体に疑問が湧いてくるのは確かですね。何せ戦闘と成長と謎解きがゲームの主な目的です。自由度と呼べる部分は、これはM&Mと同じような事ですが、移動での自由度しかない。それとてBCF以降のWizardry限定ですが・・・

だけどねえ、私は殺戮ゲーム、それしか能が無いゲームを嫌うようにいつも言っていますが、その分野において、そういう作品が正当なRPGとは思っていない私がここまで良いと思える作品なんですよ。それだけ殺戮ゲームとして、今までには無かったような究極の地点へ到達しているという事なんです。

・何も複雑に考えないでよし、戦闘モードは宇宙1!
・少しずつ先を目指して進むような、古風な味わいの展開が楽しめる
・キャラ育成、アイテム収集などの面は、最近のCRPGの中でTOPレベル


まだWizardry8を体験していない人、シングルRPGが好きな人、自分が行なった行動に見返りが欲しい人、Wizardryなど終わったと思い込んでいる人。私はこれらの方たちにWiz8をお勧めしたいです。絶対に遊んでおかなければ損をしますよ!

確かにゲームなど進歩がなくても、今までのやり方を真似るだけで面白い物ができます。Wizardry8はゲームシステムも、世間での全Wizardryに関する評判も、自分と同じ家系のWizardryにも、憎いほどの次元を見せ付けてくれた作品なんだなあと思っています。

なんか格好いいですよね。AppleUでコンピューターRPGとして初めて不動の地位を得た作品の後継品が、22年後の世界で久々に返り咲いて、他のCRPG全てを押さえ込み
「究極の戦闘モード」という形を見せつけてくれたんですから。